武蔵野美術大学造形学部デザイン情報学科

7期生・秋月 政美 MASAMI AKIZUKI

ユーザの視点に立ってデザインする

現在どのようなお仕事をされていますか?

病院、製薬会社、NPO法人などの医療や福祉、科学、教育分野を中心としたWEBサイトの企画・制作・運営・管理や広報物のデザイン、また医師のセミナーのプレゼンテーションビジュアル素材の作成など、グラフィックデザイン業務を行っています。この仕事に就く前は、携帯のコンテンツやモバイルサイトの企画・制作・運営を3年間していました。

医療情報を扱われているとのことで他の分野のコンテンツとの違いはありますか?

やはり、病気の治療に関する内容は重く深刻なものが多いのですが、WEBサイトや印刷物では明るく柔らかな色使いを使って親しみやすいイメージにしています。また、医療の専門情報は難しくなりがちですが、クライアントの意向も聞きつつ、一般の方にも伝わりやすい内容になるよう心がけています。 また、がんは、種類によって啓発カラーが世界的に定められているので、そのカラーを使ったWEBサイトデザインを作成したりもします。例えば、大腸がんの啓発カラーはブルー、乳がんがピンクといった感じです。ただ、皮膚がんの啓発カラーはブラックなので、暗くなりすぎないように気をつけたりもしました。 あとはがん経験者にお話を伺うときの言葉遣いも気をつけたりしますね。やはり命を扱う内容なので…

今まで制作されてきたコンテンツをいくつかご紹介してください。


日本医科大学 武蔵小杉病院 腫瘍内科
http://www.musako-oncology.jp/

ひとつめは『日本医科大学 武蔵小杉病院 腫瘍内科』の私設WEBサイトで、全国でも珍しい抗がん剤治療に特化した内科で、従事されているスタッフの意見も取り入れつつ、直接、患者さんの声も反映させながら、情報を構築していきました。

ポイントは、WEBから不安な気持ち、恐怖心が生まれないように気を使ったところです。病院などのWEBサイトは、堅苦しくて難解なイメージのものも多いのですが、今回は患者さんにとって親しみやすく、わかりやすい内容に仕上げたことで、患者さんだけでなくスタッフからも喜ばれました。待合室のWEBスペースでも、閲覧できるようにしてくれました。

患者の視点に立って情報を構築することが、結果として治療する側にとっても理解してもらえたことはうれしかったです。


理化学研究所 脳科学総合研究センター「BSI Youth! 若者よ 脳科学の扉をたたけ!」
http://www.brain.riken.jp/jp/youth/

つぎに理化学研究所 脳科学総合研究センター(BSI)の『BSI Youth! 若者よ 脳科学の扉をたたけ!』のWEBサイトを紹介します。 このサイトは、中高生に対して、脳科学を身近なものに感じたり、興味を持ってもらい、研究の重要性、BSIが行っている研究や活動について幅広く知ってもらうことを目的として、BSI研究者のインタビュー記事、また、素朴な疑問に対してわかりやすく回答するコンテンツで構成し、内容も見た目も面白く楽しそうなイメージで制作しました。 研究者の専門知識を正確に伝えることも重要ですが、ユーザーにわかりやすく噛み砕くことによって多くの人に興味を持ってもらうことも、WEBデザイナーの役目だと思います。

さて、秋月さんが学生時代に印象に残っている授業を教えてください。


秋月さんのグループ「沈黙のバナナが笑った」の最終プレゼンテーションの映像シーン。1960年代の学生運動のようなパワーが印象的だった。

やっぱり、1年の「課題発見」ですね。この授業は大学で初めてのグループ作業の課題で、まだ慣れていない同級生と組んで、社会問題や身近な生活で気づいた問題をテーマにして、解決策を提案するのですが、私のグループは本当に苦労しました。プレゼンテーションまでには、先生の企画チェックを受けて「Goサイン」をもらわないといけないのですが、ぜんぜんうまくいきませんでした。でも、そのおかげで先生との距離が縮まったし、周りの色々な人が手助けしてくれて、友達もたくさんできました。どんな問題をどう解決したかはぜんぜん記憶にないのですが… 「課題発見」という授業自体を問題として投げかける動画を作ったような… グループ名は「沈黙のバナナが笑った」といって、後輩たちの学年で、崩壊しそうなグループは「バナナ」って言われてたきがする(笑)。

卒業生として、これからデザイン情報学科を志望している受験生に向けてメッセージをお願いいたします。

美大って専門性が強く目的意識が高いと思われがちだけど、デ情って実技の代わりに数学で入れて、理数系だけど、デザインも気になるなぁって…いろいろ迷っている人でも、受け入れてくれます。入るときに間口が広いだけじゃなくて、出るとき…就職に関しても、広告やグラフィック系でもプログラム系でも自分の方向性次第でいろいろチャレンジできるから、面白い学科だなと思います。

在校生に向けてメッセージをお願いいたします。

一つの専門分野だけを極めるよりも、あれもできるこれもできる方が社会に出てから重宝されるし、困らないので、いろいろ学べるデ情のメリットを活かしてほしいなぁと思います。

あきづき・まさみ
2008年度卒業。現在「株式会社かるてぽすと」(http://www.kartepost.com/)でアートディレクターとして活躍中。医療系を中心としたグラフィックデザインやWEBデザインの業務を行っている。

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