武蔵野美術大学造形学部デザイン情報学科

主任教授

今泉 洋Hiroshi Imaizumi

1951年生まれ。武蔵野美術大学建築学科卒業。在学中よりライターとして音楽評論や FM 音楽番組構成などを行う。81年から、当時ベンチャーであったアスキー社のニューヨーク駐在員としてメディアビジネスを調査。帰国後、雑誌創刊、情報サービス企画を担当。93 年退社し、情報関連分野のコンサルタントとして活動。

Q. 研究テーマと分野は何ですか?
A. 「場」を支えるコラボレーションのしくみ(リアリティ・エンジニアリング)、あるいは「場具」というしくみ

Q. その内容は?
A. 「知っている・知らない」という“情報の上下関係”、“教える・教わる関係”ではなく、「知らない」同士が話しているなかで双方が新たな情報を生成していく、“発見し合う関係”のあり方を考えています。手短に言うと、互いに好奇心を刺激することによってセレンディピティ(serendipity:思わぬ発見をする能力)を導き、自己実現につなげるヒューリスティック(heuristic:発見的)な方法のことです。それをデジタルメディアを使ったコラボレーションという枠組みの中にいかに装置化していくか、というのが目下の関心です。

Q. 教授の視点から見る「デザイン情報学科・学生」とは?
A. 大学生活の価値は、大学に入る前と出た後、そこにどれくらいの差を生み出せるかで決まります。大学の4年間というのはより良い自分に“変身”するための期間である、ととらえるべきでしょう。
ところで、うちの学科の学生を見ていると、ほとんどの学生はデザイン情報学の何たるかを分からずに入学してきているようです。正直に言うと、第一志望の学科に入れなかったために、仕方なくこの学科に入ってきた学生が多いと思います。
確かにこれは“不幸”なことかもしれない。しかし、見方を変えれば、この時点でよりよい自分に“変身”するための準備は整っていると言っても良い。それはなぜか?
僕は、デザイン情報学のテーマの一つとして「非安定の価値」に注目したいと思っています。具体的に言えば「変化をチャンスに変えるための方法論」を考えてみようということなんです。
われわれ人間は基本的に、環境との間に快適なバランス、“幸せな安定”を保とうとします。何も変わらなければ退屈ですが、できることなら先の見えない大きな変化は避けたいと思っています。しかし、自分自身をよりよい存在に変えていこうとすれば、このバランスを意図的に崩し、新しいバランスを見つけて安定しなければならない。とくに子どもから大人になろうとするとき、つまり大学生活を経験する時期といっても良いのですが、このことがとても大きな問題になります。
こうした見方からすれば、「第一志望不合格」という“不幸”を経験し、デザイン情報学科に入学した諸君は、“幸せな安定”がすでに崩れた状態にあると言えます。であれば、さっさと頭を切り換えて、これをうまく活用することを考えたほうが良い。このショッキングな“不幸”を新たなチャンスとして活かし、より良いバランスの実現に向けて自分自身を組み替えていく……その準備が整っている、と考えてみるべきです。
言うまでもなく、現代はきわめて不確実な時代、つまり伝統やこれまでの実績がアテにならない時代です。高い評価を得ていた権威が地に落ち、多くの“不幸”が生まれている。だからこそ、これまでにない新しい力、臨機応変のバランス感覚が求められている。こんな時代には、誰かが用意してくれた“幸せな安定”にしがみつこうとするよりも、自分自身の力で問題を解決していく能力こそが求められていると思います。実はこの話、べつに“不幸”を経験した学生だけじゃなくて、日本全体に言えることなんですけどね。
それはさておき、デザイン情報学科はこうしたバランス感覚とデザインという運動能力を育てる体験の場であるべきだ思います。学生諸君には、「変化を友としてつきあっていく方法」を学ぶところだと考えてもらいたい。そして、ここで得られる方法論を上手く使って“変身”し、これまで美大生に期待されていた役割を遙かにしのぐ活躍をして欲しいと思っています。

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