武蔵野美術大学造形学部デザイン情報学科

教授(学長)

長澤 忠徳Tadanori Nagasawa

1953年生まれ。武蔵野美術大学卒業後渡英。英国Royal College of Art 修士課程修了。81年帰国後、事務所を開設。87年には、ロンドン、東京を拠点とするデザインシンクタンクを設立、デザインコンサルタントとして数々の幅広いデザイン活動を国内外で展開。また、国際交流を推進し、海外提携大学での講義、ワークショップを行っている。

Q. 研究テーマと分野は何ですか?
A. デザイン情報論、カルチュラル・エンジニアリング

Q. その内容は?
A. デザイン情報論:
構想力としてのデザイン、理解力としてのデザイン、汎技術としてのデザイン、という観点で、情報を軸とした新しいデザイン概念の開拓を目指して研究しています。
カルチュラル・エンジニアリング:
デザインの社会効用論の立場から、「文化」を現出させる可能性を持つ装置としてのデザインの役割と方法について、「文化」とは何かという問いを含めて、その基礎研究から応用展開に至る一連のプロセスを、具体的な社会活動、教育実践活動を通じて研究しています。

Q. 教授の視点から見る「デザイン情報学科・学生」とは?
A. 本学科の学生諸君は、「デザイン情報学」とは何か、デザイン情報学科はどんなことを目指した学科なのかという問いに、難解さと戸惑いを感じているように思います。しかし、このすっきり言明しにくい、ある意味で曖昧で苦しい情況こそ、新しい学問とその具体を生み出していく手ごたえに他ならないと思っています。学生諸君は、性急に、わかりやすさを求めます。しかし、知識も技量も未熟な若き学究に、そう簡単にわかる内容だとすれば、それはおそらく、すでに社会で実現してしまっているものであったり、安直で表面的なわかりやすさでしかないかもしれません。「現在という名の過去を未来に向けて発掘していく」という態度を、学生諸君に求めたい。もちろん、このことは僕自身も自覚しようとする命題です。正直、まだ僕も言明できません。そして、僕自身、学生諸君と同様の困難に立ち向かっています。
何でもできる学科であるという理解も、決して間違ってはいませんが、それは学生諸君の主体性によります。結果として、他学科と同様の制作物ができたにせよ、そこへ至るアプローチの違いにこそ、新しい時代を拓いていく可能性が秘められていることを自覚してもらいたいと思います。つまり、同じ制作物でも、新しいアプローチを試み、そのあり方の位相を変えるということを考えて欲しいのです。だからこそ、すでに多様なデザイン関連学科が設置されている本学に、デザイン情報学科が新たに生まれた理由があるのではないでしょうか。
今年度から新しいカリキュラムが運用されています。学生諸君が自らの問題意識を基盤に、自分独自の専攻領域を創造していけるような科目構成を目指しています。次代に活躍するクリエイティブな人材は、あらかじめセットされた選択肢ではなく、自分で卓越性を得るための自己研鑽装置をも作れる能力が必要です。新しい職能/職業を学生諸君が自ら創り出していってくれることこそ、本学科教員としての僕の期待です。自らの意志として「何を問題にするか」が重要なのです。さらに言えば、本学科での、たった4年間ぐらいでは、その答えは出ない。おそらくライフワークとなるそのきっかけをつかんでもらうための貴重な原体験が与えられる濃密な期間なのだと思います。社会の現実に合わせるのか、社会を変革していこうとチャレンジするのか。
迷って、悩んで、混乱しても、若さと真摯な眼差しがあれば、必ずや新しい何かを発見できます。あの遥かなる水平線に向って漕ぎ出す勇気と信念が、僕らの創造的な生き方を支えてくれます。夢多き人であって欲しい。
コンピュータ操作が上手、ドローイングが得意、発想が独創的、知識が豊富、分析力が抜群、論述力に長け、筆力もある、交渉力、説得力が人一倍。願わくば、全部卓越していたい。どうして、「そんなこと、夢だよ、理想だよ」と大人ぶるのですか?
若さを放棄するのですか?次代を担うデザイン人材は、もっとどん欲であって欲しい。
訳知り顔のずるい若者に、未来は託せない。大学は、専門の学問を学ぶだけの場ではないのです。社会のあり方、文化、世界観に、すなわち、他者に影響をあたえる表現領域に生きようとする学生諸君には、専門性とともに、正しい倫理観と全人格性が求められます。僕はそう信じています。

武蔵野美術大学専任教員プロフィールページ

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