2017年
渡邊 真樹[井口ゼミ]
東京都内81ヶ所の映画館に訪れた133人を対象として、行動観察調査(尾行)を行った。テレビやスマートフォンなど、映画の楽しみ方の選択肢に手軽さが加わった現代において、わざわざお金と時間をかけて映画館に足を運ぶことは、その日の一大イベントとなる。その一部始終を観察して導き出された大きな2つの行動パターンを、新たなブレイクタイムとして再定義したうえで、展示会の来場者へ向けて、観察記録をコーヒーと共に持ち帰るという体験を提供した。
ただ映画を視聴するだけなら、いつでもどこでもできる便利な世の中において、“なぜ今、映画館なのか?”という漠然とした問いかけとその回答をUXデザイン的観点から見事にリンクさせた力作的研究。いかに「映画館に行って、映画を観る」という行為が、“特別なイベント”に変貌させる魔法になりうるか…そのヒントが133通りある。心の豊かさを求める「日常をブレイク(破壊)し、非日常化(タイム創造)する」光線が多彩に見える…。(井口 博美)