武蔵野美術大学造形学部デザイン情報学科

大学院

修士課程デザイン専攻デザイン情報学コース

デザイン情報学コースは、社会性を考慮した論理的アプローチと美を求めた感覚的アプローチの両面で成り立っています。論理に基づくデザイン提案だけでなく、感覚的な思考のプロセスを分解し、新たに研究制作として構築することを期待します。また、指導教員の研究分野である「メディア表現系」「デジタル技術系」「コミュニケーション創発系」の三つの専門領域を中心としながらも、それらを横断的な視座で捉えた研究を試みます。修士の最終成果は[1]メディアやデザインなどシステムの提案、[2]コンテンツ・表現の研究論文、[3]上記に関連する作品制作を目標とします。

理念・教育目標

デザイン情報学コースは、多様なデザイン行為やメディア表現を情報学の視座 から研究し、生活や社会環境に対する新たな捉え方を提示することを教育理念とします。また、本コースは、研究アプローチによって最適な研究成果を求め、 論文執筆もしくは作品制作、またはその複合的な成果も受容し、デザインとその周辺世界を開拓する理論構築とその実践を教育目標とします。

研究概要集(2020年6月現在)

2020年度6月現在、デザイン情報学コースに在籍中の学生の研究概要一覧です。

『写真表現におけるタイポロジー手法の比較研究』

オウ モヨウ 『写真表現におけるタイポロジー手法の比較研究』

本研究では、デジタル写真とネットワークの発達が触媒となって現れた、ネットワーク上のタイポロジー写真の流行を踏まえた上で、現代美術での「タイポロジー(類型学)」の分析を行い、得られた知見を基にビジュアル表現の拡張を試みるものである。「町中華」は日本の中華料理店であるが、中国本土のそれとインテリアに大きな違いがあることに、来日してから気づいた。中国の料理であるにもかかわらず、そこには日本らしさがある。日本の中華料理店を観察対象とし、外装を撮影し収集する。これを類型学的に分類し、その中に共通する要素や色と文字をグラフィックの観点から分析する中で、外装の写真はタイポロジー写真の要件である背景の統一が困難であるという問題に直面した。そこで建物の三次元化したデータを作ることにより、比較を容易にした。これを「3Dタイポロジー」とし、その可能性について研究している。


遠隔地で暮らす親子間のインタラクティブコンテンツの提案

コウ ブン 遠隔地で暮らす親子間のインタラクティブコンテンツの提案 ―中学・高校の留学生を中心に―

 近年、中学・高校からの留学がますます増えている。精神面で自立できていない中学・高校生にとって、親とのコミュニケーションは重要であり、思春期の不安定な心理状態にある子どもは、心理的な安全を保証する「居場所」が必要であるとも言われている。また、中学・高校の留学生は海外で家族と離れて暮らしているため、親子間のPCやスマートフォンでのメール、メッセージ、チャットなどは不安な感情を和らげるために最も一般的な手段となっている。
 インタラクションデザインにおける先行研究では、親と子の互いの情報を伝達し合い、活発なコミュニケーションを促すシステムは発表されているが、留学で親子が遠隔地で離れて暮らしていることを前提としたコミュニケーションシステム(アプリケーション)はない。
 本研究は、親子間の効果的なインタラクションについて研究し、留学のために親元を離れて暮らしている中学・高校生と親とのコミュニケーションを促進したいと考えている。また、留学生が家族のサポートによって精神的な自立を実現することを目的とする。

都市公共空間における環境情報の可視化

サイ シカ 都市公共空間における環境情報の可視化 ー空間のメロディーー

人と環境は互いに影響し合い、環境は人の行為によって変化し成長すると考えている。本研究は公園、駅、街道など都市公共空間における環境情報を抽出し要素を分析する。次に様々な都市公共空間から抽出したデータに基づき、それぞれの空間の特徴を把握し、デジタルコンテンツとしてビジュアルとサウンド・ボイスに変換しようと考えている。
 先行事例では環境情報を図や映像など視覚化する研究や作品がある。本研究は環境情報を視覚化するだけでなく、さらに聴覚化として旋律(メロディー)に変換しようと考えている。その旋律(メロディー)を基に、調査した都市公共空間独自の曲(音楽)を制作しようと考えている。
 旋律(メロディー)は音階とリズムで構成される。環境情報の要素として人、建造物、自然物に分類し、動き・変化のある要素を音階とリズムに変換しようと考えている。また、都市公共空間は季節や時間帯によっても変化し、一定のルールを探ることも重要だと考えている。
 人と公共空間の深い繋がりを作品として表現し、公共空間の利⽤者の⽣活に反映することが本研究の目的である。

繊維素材におけるASMRの分析と応用

トウ ニナ 繊維素材におけるASMRの分析と応用 ー視覚・聴覚・触覚の刺激に基づいたインタラクティブコンテンツの制作研究ー

本研究は、ASMR(聴覚や視覚への刺激によって心地良いと感じる反応・感覚)に着目し、繊維素材における視覚・聴覚・触覚の刺激を分析し、その結果を応用してインタラクティブコンテンツの制作を行おうと考えている。
 私は大学時代に服飾デザインを学び、ウールフェルト生地を代表とする繊維素材に関心を持ち、ふわふわとした感触と視覚に強く惹かれた。繊維素材は、様々なプロダクトを作ることができ、視覚情報だけでなく「柔らかい」、「あたたかい」、「軽いボリューム感」などの触覚情報によって心地良さを提供している。
 インタラクションデザインの基礎研究する上で、対象物の視・聴・触覚の要素とユーザの心理的変化について分析することが重要だと考えている。最終的に繊維素材におけるASMRを基にした作品制作を目指す。

『見立てによる隠された社会現象の可視化』

リュウ カキ 『見立てによる隠された社会現象の可視化』ータイポロジーの手法を用いた写真表現ー

日常的風景には、社会の文化や習慣といった何らかの意味が潜んでいる。街を歩いていてふと目についたオブジェクトを観察すると、その形と特性からオブジェクトの機能だけではなく、そのものを生み出した社会の文化や習慣が見えてくる。しかし、人々は風景の持つ意味や制度を無意識のうちに無視している。日本に留学してから、中国と異なる様々な日本の風景を目にした。例えば、日本ならではの青いゴミネットのようなオブジェクトは、日本人にとってはただゴミを隠す機能でしかない。
 本研究は、見立てによって日常にある風景を見直すことを目指す。一つの見立ての視点から同一のオブジェクトをタイポロジーの手法を使い、撮影し収集する。日常的風景の一部を、隠され続けている社会現象の象徴に見立て、風景に潜んだその社会の特徴や制度を探索し、写真によって可視化することを目的とするものである。

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