2022年
―日米等比較による表現の一断面―
川又 彩伽 [森山ゼミ]
パロディとは、元ある作品にユーモアや皮肉を込めて、作り替えることである。現在の日本は海外に比べ、パロディに対して寛容ではない。しかし、「江戸時代はパロディの時代」と言われ、パロディ表現が盛んに使われていた。また、1960年代にはアメリカ文化の影響を強く受け、パロディブームが起こる。日本でもパロディ表現が盛んに行われた時代があった。本作品は、日本と米国等を比較し、パロディの変遷の一断面を取り上げ、文化面や政治面からパロディの特性についてまとめた。ぜひ、パロディの魅力を感じていただければと思う。
東京五輪のエンブレム騒動以来、パロディを称揚することは容易ではない。批評やユーモアを込めたパロディ作品に対して寛容ではなくなったのだ。こうした事態はクリエーターの表現の幅を狭めているのではないか、という思いに発するのがこの研究である。そのため、1960年代の米国、18・19世紀の英国・フランス、江戸時代後期の「日本的パロディ」に遡って表現の変遷をたどることで、現在の状況を解明することに成功している。問題意識十分な内容であり、造本も申し分ない。(森山明子)