2020年
-伝統工芸に学ぶ幾何学的な球面模様の生成システムと展開-
池田 苑夏[高山ゼミ]
本研究では、手毬の表面に描かれる模様の幾何学性を分析し、数式的に再現するシステムを構築して、3DCGの手毬の生成を試みた。日本の伝統工芸の一つである手毬は、球面上に四季折々の情景を象った刺繍を施して作られる。幾何学の分野ではこの模様が球面幾何学的な構造をもっていることが知られている。このような日本独自の感性、意匠、技術が生み出した手毬の魅力の再発見を促すものとして作品を制作した。また、手毬の模様のシミュレーションツールや球面上に自在に幾何学模様を描くツールとしての活用可能性も提示する。
日本の伝統工芸には技法と表現が一体となった美しい幾何学文様が多くみられ、手まりはその代表といえる。作者はその審美性を生成規則として捉えることを目指し、球面幾何の観点から数理的に追究した。それに加え、実装としてプロシージャルな技法を用いてかつてない様式美を実現するだけでなく、それを実物の手まりに還元して考察まで行った労作である。アルゴリズムが伝統文化の継承・発展にも有効であることを体現した秀作と言えよう。(高山 穣)