2022年
―ニットによる表現研究―
吉田 実縫マティルダ [大石ゼミ]
ニットを編むという事は、時間に拘束され、ノスタルジーに浸る事である。ニットを編んでいき、トランス的な状況下で見つけた私の真実を、ニットに映像を投影する事でニットのノスタルジーを破壊し、表現する。愚かで、賢い私たちを想った作品。
作者自身の手で時間をかけて編み込まれたニットは、美しく繊細なオブジェであり、映像を映すスクリーンでもある。ニットそのものをメディアとして捉え、物質とイメージが融け合った幻想的で高尚な空間は鑑賞者を引き込む。「愚かさ」「賢さ」相対するが表裏一体でもあるという作者の哲学を、ニットという素材に構造的、思想的な類似性を見出し、素材研究を重ね、映像インスタレーションとして巧みに表現している点を高く評価した。(大石啓明)