2024年
煙突ブラシの音を楽しむ
野嶋 慶乃 [佐藤ゼミ]
煙突掃除ブラシの音を煙突に共鳴させるサウンドインスタレーション。
回転するブラシが吊るされたブラシを弾き、その振動が棒をつたって煙突に共鳴します。
棘のある独特なフォルムから奏でられる、きらきらした、どこか儚げな音。
音を出すために生まれてきたわけではないブラシの音に魅了され、この作品をつくりました。
ブラシの音は、実際に掃除する際には雑音として扱われてきたものです。
この綺麗な雑音に出会えたことは、運命だったのかもしれません。
─薪ストーブの煙突と、その内側に溜まる煤を除去するブラシ。この組み合わせが発する擦過音は一般に不快な雑音とされる。作者は店先で偶然に煙突ブラシと出会い、指で弾いた時に鋼鉄製の毛の一本一本が発する可憐な音に気付く。この微弱な音を安定して奏でるための試行錯誤の結果がこの音響装置だ。ブラシの音は溶接された煙突掃除用の太い針金を伝わり、煙突管を共鳴させる。同じ要素を使いながら、全く別の価値を創出した点が秀逸である。(佐藤淳一)